冬子の結婚

 向かいの奥方は、冬子の縁談を気にしてくれて、お見合いの話を持って来てくれました。冬子自身、都会に就職しているので、田舎に戻り生活するのは、やはり気が乗らないため、奥方の縁談に傾きました。結婚しても、勤めを辞めなくても良い縁談に、だんだん気持ちがのってきました。又、身元がしっかりしている。それもそのはず、向かいの奥方の甥ごさんとの縁談なのです。決まる縁談は早いものです。あっと言う間にお互いが気に入り結婚の運びになりました。冬子は、冬二子と違い浅黒く、そんなに美人ではないけれど、人を楽しませてくれる、親分肌の面倒見の良い子でした。向かいの奥方は、そんなところを見て進めてくれたみたいです。冬子22歳の春でした。夏子には姉が結婚すると言う意味がまだ分からない年でした。すぐ帰ってくるものと考えていたのですから。太郎や花子にとっては、初めて娘を送り出す儀式に、余念がありません。