2020-06-01から1ヶ月間の記事一覧

僕は何者?

太郎と花子にしてみれば、自分の子供が、遠いところに養子に出すより、自分の家の近くで育つ方が、いつまでも成長を見ていられると考えたのでございます。段々大きくなり、物心がつく頃には「小父さん、小母さん」と呼んで遊びに来ます。本人は養子であるこ…

お向かいの奥方との絆

お向かいの奥方には、子供がしばらくできませんでした。御夫婦はとても仲良しです。仲の良い夫婦ほど子供が出来にくいと言われていますが、こればかりは、「神のみぞ知る」です。その代わりと言うと語弊がありますが、太郎と花子には、すぐ子供が生まれるの…

冬子の縁談

お向かいの奥方が、見慣れないお客が頻繁に夏子の家に入るのを見て、気になりました。ある日夏子に尋ねました。「よくお客さんが見えるけれど、何かあったの?」「お姉ちゃんをお嫁にほしい人が来たんだよ」「そう?縁談なの?どんな人?」「どこかの先生ら…

母の心配

夏子の目が開かなくなりました。花子は心配して、大きな病院に連れていき栄養失調と診断されました。好きなものしか食べない偏食がたたりました。目が見えないことを経験したものだから、それからは何でも食べるようになりました。花子も二人の姉がいるとき…

一人っ子のような夏子

夏子が、物心着いたころは、姉や兄は家にはいませんでした。それぞれ大学や短大に行きましたから。相変わらず貧乏は変わりありません。太郎は何年経てもうだつが上がらなく、給料は毎年変わりなし。真面目、人にへつらうことができない正直者だから、立身出…

終戦の残る貧しい時代

夏子が生まれたすぐは、花子も 体が弱く、大変でしたが、病院で手術してからは、大変丈夫になり、どこから見ても、農家の嫁にふさわしく、舅も何かと頼りにしました。反対に姑は、口はうるさいですが体がおデブさんで、あまり動かない人でした。まあ、ある日…

冬子の子守

ある時、学校から帰った冬子は、カバンを玄関に、投げてすぐ遊びに行こうとしました。花子に呼び止められたのです。「今から田んぼに行くから夏子を見ていてね」「遊びたいのにしょうがないな」冬子にとっては、遊びたい盛りですが、農家にとっては、子供も…