冬子の子守

 ある時、学校から帰った冬子は、カバンを玄関に、投げてすぐ遊びに行こうとしました。花子に呼び止められたのです。「今から田んぼに行くから夏子を見ていてね」「遊びたいのにしょうがないな」冬子にとっては、遊びたい盛りですが、農家にとっては、子供もの手も、猫の手と同じくらい借りたいほどの忙しさだから、御多分に洩れず、お手伝いが優先します。まして女の子は、小さくても、一人前に働かされるのです。長男の秋男だけは、農家の跡取り息子だから,祖父、父、母から大事にされ、別格扱いです。男の子は、御多分に洩れず、生まれた時から、病弱だから、何もさせず、お手伝いもさせません。女の子は昔から,放っておいても、よく育つといわれるとおり、冬子や、冬二子も御多分に洩れず、元気に育っているのでございます。冬子はやはり長女だから、下の子の面倒味が良いです。良すぎて夏子を無理やり抱っこして、近所に見せびらかしておりました。そのとき、手を滑らせて、夏子を落としてしまいました。「ギャアーギャアー」と散々泣かれて大変でした。多分、兄弟姉妹の中で、一番頭が悪いのは、夏子です。栄養事情の悪い時、生まれたことも関係しますが、この時の衝撃によるものかもしれません。と大きくなってから、夏子は姉を攻めていました。