一人っ子のような夏子

夏子が、物心着いたころは、姉や兄は家にはいませんでした。それぞれ大学や短大に行きましたから。相変わらず貧乏は変わりありません。太郎は何年経てもうだつが上がらなく、給料は毎年変わりなし。真面目、人にへつらうことができない正直者だから、立身出世は夢の又夢。又、太郎は自分が勉強したいのに、大学に行かせてもらえないことが事がとても悔しかったので、子供たちは、特別勉強が出来なくても、無理してでも、大学は出してやりたかったと、話していた。倉の中には、自分が勉強した英語の辞書や、書物がおいてありました。今から考えれば、学者タイプの人だった。とても世渡りが上手とは言いがたい。勉強だけが取り柄でした。農家の長男でなければ,もつと勉強が好きなだけできたことだろう。そんなわけで、初めての子供である、冬子には、ただで行ける学校を見つけて来た。この田舎から都市部の学校には、下宿しなければ、通えないのです。戦後は学校もできたてで、いろんなところから生徒を集めていた。良き時代でありました。秋男は大学,冬二子も短大へみんな都市部に下宿をしたら、お金は羽が生えて飛んでいきました。夏子だけは一人っ子みたいに育てられ、夏休みとか、冬休みにならないと帰省しないのです。花子は、相変わらず、舅と朝早くから農作業です。夏子は我が儘に育ち、自分の好きなものしか食べません。南瓜が好きで、あけても暮れても南瓜を食べていました。ある時、目が見えなくなりました。