お向かいの奥方との絆

 お向かいの奥方には、子供がしばらくできませんでした。御夫婦はとても仲良しです。仲の良い夫婦ほど子供が出来にくいと言われていますが、こればかりは、「神のみぞ知る」です。その代わりと言うと語弊がありますが、太郎と花子には、すぐ子供が生まれるのです。その当時は「産めや増やせの時代」と重なり、貧乏人なのに子沢山になりました。冬二子と夏子との間に、もう一人子供がいたのです。その子供をお向かいさんが、「養子にほしい」と生まれてすぐもらわれていきました。花子も体が弱く、太郎も病弱だから、とても金持ちであるお向かいの御夫婦のもとに養子にいけば、幸わせになると考えたのです。また、その子は、お向かいの奥方が気に入り、なかなか奥方から離れなかったそうでございます。本当に、そこの家の子になるのが決まっていたみたいな、不思議な絆でございます。