母の心配

夏子の目が開かなくなりました。花子は心配して、大きな病院に連れていき栄養失調と診断されました。好きなものしか食べない偏食がたたりました。目が見えないことを経験したものだから、それからは何でも食べるようになりました。花子も二人の姉がいるときは、子供たちに、行儀やしつけに厳しかったけれど、最後の夏子には、とてもしつけが甘くなり、我が儘放題に夏子をさせたことを反省しました。姑が生きているときは、気持ち的に大変でしたが、舅はとても花子には優しかったので、我慢できたと漏らしていました。お金はなかつたけれど、気持ち的には、穏やかな日々でした。肉体的には、農家の嫁は、体がきついです。農家の息子に嫁が来ないし、農家の娘も農家を嫌う時代に突入しました。

 

 

 

一人っ子のような夏子

夏子が、物心着いたころは、姉や兄は家にはいませんでした。それぞれ大学や短大に行きましたから。相変わらず貧乏は変わりありません。太郎は何年経てもうだつが上がらなく、給料は毎年変わりなし。真面目、人にへつらうことができない正直者だから、立身出世は夢の又夢。又、太郎は自分が勉強したいのに、大学に行かせてもらえないことが事がとても悔しかったので、子供たちは、特別勉強が出来なくても、無理してでも、大学は出してやりたかったと、話していた。倉の中には、自分が勉強した英語の辞書や、書物がおいてありました。今から考えれば、学者タイプの人だった。とても世渡りが上手とは言いがたい。勉強だけが取り柄でした。農家の長男でなければ,もつと勉強が好きなだけできたことだろう。そんなわけで、初めての子供である、冬子には、ただで行ける学校を見つけて来た。この田舎から都市部の学校には、下宿しなければ、通えないのです。戦後は学校もできたてで、いろんなところから生徒を集めていた。良き時代でありました。秋男は大学,冬二子も短大へみんな都市部に下宿をしたら、お金は羽が生えて飛んでいきました。夏子だけは一人っ子みたいに育てられ、夏休みとか、冬休みにならないと帰省しないのです。花子は、相変わらず、舅と朝早くから農作業です。夏子は我が儘に育ち、自分の好きなものしか食べません。南瓜が好きで、あけても暮れても南瓜を食べていました。ある時、目が見えなくなりました。

 

終戦の残る貧しい時代

  夏子が生まれたすぐは、花子も 体が弱く、大変でしたが、病院で手術してからは、大変丈夫になり、どこから見ても、農家の嫁にふさわしく、舅も何かと頼りにしました。反対に姑は、口はうるさいですが体がおデブさんで、あまり動かない人でした。まあ、ある日それがたたり、普段から高血圧でしたが、脳いっ血で倒れ、そのまま帰らぬ人となりました。夏子二才、冬子十二歳、秋男十歳、冬二子八歳の時でした。花子は、子供達が、学校に行っているときは、背中に、夏子を背負い、舅と二人で農作業をこなしました。子供が帰ったら、冬子に子守させ、夕飯の用意を娘たちに頼み、暗くなるまで仕事していました。秋男だけは、案外のびのびしていたそうです。この家の今では伝説になりましたが,秋男が、Γ腹へった。なんかよこせ」と言うので、太郎が、キャラメルを四等分にして、みんなに与えていたそうです。今では考えられない、貧乏な時代でした。

 

冬子の子守

 ある時、学校から帰った冬子は、カバンを玄関に、投げてすぐ遊びに行こうとしました。花子に呼び止められたのです。「今から田んぼに行くから夏子を見ていてね」「遊びたいのにしょうがないな」冬子にとっては、遊びたい盛りですが、農家にとっては、子供もの手も、猫の手と同じくらい借りたいほどの忙しさだから、御多分に洩れず、お手伝いが優先します。まして女の子は、小さくても、一人前に働かされるのです。長男の秋男だけは、農家の跡取り息子だから,祖父、父、母から大事にされ、別格扱いです。男の子は、御多分に洩れず、生まれた時から、病弱だから、何もさせず、お手伝いもさせません。女の子は昔から,放っておいても、よく育つといわれるとおり、冬子や、冬二子も御多分に洩れず、元気に育っているのでございます。冬子はやはり長女だから、下の子の面倒味が良いです。良すぎて夏子を無理やり抱っこして、近所に見せびらかしておりました。そのとき、手を滑らせて、夏子を落としてしまいました。「ギャアーギャアー」と散々泣かれて大変でした。多分、兄弟姉妹の中で、一番頭が悪いのは、夏子です。栄養事情の悪い時、生まれたことも関係しますが、この時の衝撃によるものかもしれません。と大きくなってから、夏子は姉を攻めていました。

花子には夢がありました。それは子供たちが自分より大きく羽ばたいてくれることです。自分は戦争や女は勉強しなくて良い、嫁に行くために、裁縫、読み書きそろばんだけできれば良い、夫には従い、舅と姑には仕え、絶対自分の意見など言える時代ではありませんでした。そんな時代を生きてきたので、子供達には、自分の好きなことを、させてあげたいと考えていました。まだまだ、女は奴隷のように働く時代でした。男尊女卑の色濃い時代に、女の教育が出来るようになるまでには、大変時間のかかる問題でした。そんな時代に花子は、男も女も教育を受けさせねば、これからの時代はこのように夢に向かっていくべきだと、太郎に熱く語るのでした。

簡単なダイエット方法は?

花子が結婚した時は着物の帯が結べない位太っていたのに、子供一人ずつ産むことによって約7kgずつ痩せていったのです。これは今から考えると、毎日休みなく、 朝早くから、夜遅くまで、働きずくめで働けば、運動量はかなりのものだったのでございます.自然にダイエットになったのです。娘時代は食べてばかりいて、そんなに動かなくてもよかったから太っていただけなのです。それが、馬車馬のごとく、体を動かす事によって、自然と体重を落とせたのです。何が幸いするかわかりません。体重を減らす事により、体が軽くなり、とても動きやすくなったのでございます。
あまりにハードだったため、病気にはなりましたが、精神的には、お蔭様で大変強くなりました。
昔の柔な嫁ではありません。子供も4人いれば強くなります。太郎はΓお前は強くなったなと、嫁にきたときはおとなしかったのになあ」と、時折ぼやいています。世の太っている皆様、簡単なダイエット方法は、花子の様に、何と体を毎日動かす事だったのです。

花子は男に変身したの?

花子は,体の異常を感じはじめて、一人で悩んでいました.朝早く起きて,田畑の手伝いをし,帰ってきてから,直ぐ、馬,牛,鶏の世話,それを終えたら,ようやく皆の朝食の用意をします。それを終えて、今度は、太郎や子供達の弁当作り、太郎を勤めに送り出し、子供達を学校に送り出します。一息する暇がありません。すぐ、又舅と姑と産まれたばかりの夏子をつれ,農作業です。彼女はいつ休む暇があるのでしょう?ありません。ただ馬車馬のように,クタクタになるまで働き続けるのです。こんな生活を毎日毎日続けていれば,病気にならないのが,不思議です。花子もご多分にもれず,病気になってしまったのです。しかし,彼女の異常さに,体の弱い太郎はきずくはずもありません。とうとう,花子は起き上がることさえできなくなり,病院に入院してしまいました。彼女の股から.何やら変なものがぶら下がっていたのです。花子は最初,自分は男に変身したのかと思ったと話しておりました。原因はイロイロ疲れもあっただろうし,精神的にも肉体的にも飽和状態だったのだと思います。医学的には子宮が外に出てしまった状態だったのです。子宮脱という病名でした。何とか手術をして子供達の所に戻ってくれたとき,太郎はホットしたものです。